ネガティブ・スイッチを切り替える

 第81回米アカデミー賞外国映画賞を受賞した「おくりびと」の脚本を書いた小山薫堂氏は、「もったいない主義」という新書の中で、「ネガティブ・スイッチを切り替える」ことの重要性を説いている。そして、考え方一つで、ネガティブな出来事からポジティブな面を引き出すことが企画の一つの要素だというのである。
 企画というのは、普段組織にいると、特定の部署、マーケティングや設計部門の話のように感じる。多くの人は与えられた役割を果たし、組織のルールに則って仕事をし、成果を出すことで精一杯で、企画というのは身近に感じられない。PDCAを回すときのPは計画であって、企画ではない。改善活動も問題の定義から始まるが企画と呼ばない。目標や方針も設定であり、企画とは呼ばない。どうして私たちはの仕事は、企画ではなく、計画・定義・設定と呼ぶことが多いのだろうか。
 それは、もっと上位の概念があるからではないか。上位の戦略や方針、目標である。つまり、発想の初めの段階が所与に定義されているということである。しかし、よく考えてみると、PDCAは上位の目標や方針をどのように達成するのかを企画することでもある。これを計画としてしまうと、従来からのやり方や上がやりたい、やって欲しいというやり方を前提としてしまう。これがうまくいっているときはよい。しかし、うまくいかないときに、工夫したり、プロセスを変えたりすることができるのだろうか。
 そうならないために、計画の段階で企画をしようということなのである。
 今回、日本経営品質賞の報告会は、まさに計画ではなく、企画であった。これまでは受賞企業があったので、受賞企業の経営内容の説明や、過去の受賞組織のその後の取り組みの報告の時間配分をするだけで事足りていた。しかし、昨年度は受賞組織がないので、報告会を企画せざるを得なかった。受賞組織がないというネガティブな出来事から、過去に受賞した素晴らしい企業の社長の話をふんだんに提供し、参加者が聴くだけでヒントになり、自信となるように時間を取ることができるというポジティブな面を引き出し、今回の報告会が成立した。
 外部や内部からネガティブな出来事が耳に入ってくる。それに過剰に反応するのではなく、発想を変え、目標達成のため柔軟にものごとを変えていく。それには企画が必要である。もっというと、考えるということである。考える、というとどう考えるのか難しい。そこでまずは、「それは、大変だね、ちょっと企画してみようか」と社内で話し合えるようしてみてはどうだろうか。
(この原稿は生産性新聞2009年4月15日号に掲載されたものです)

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