経営者は未来にフォーカスして、問いかけよう(好かれるワケ、嫌われるワケ7)

 「100年に一度」、「未曾有の経済不況」という言葉が聴かれることが多くなってきた。人はこの言葉にどのような意味を持たせているのだろうか。これまでに例のない不況であるからうまくいかないのは当然だとか、こrまでに体験したことのない不安や危機意識をあおる意味で使っている人がいるように感じる。果たしてそんなことに意味があるのだろうか。

 多くの経営者は、これまでのやり方では通用しない、やり方を変えなければならない、という意識を強調するために使っているように見える。そこからは経営者の、変えることで生き残り、成長できるという信念が伝わってくる。

 リーダーは、ピンチをチャンスにするという点に焦点を合わせて行動して欲しい。物事にはいつも両面がある。不況をピンチとしか見られない人は、悪い情報しか入らず、その影に隠されたチャンスの芽に、フォーカスすることができない。悪い情報にフォーカスすればするほど、自分たちに無力感がただよう。そして、失敗したことばかりが頭によぎり、自分や部下の能力を割り引いてしまう。

 しかし、ピンチをチャンスにしたいという意識で見ると、いろいろなものが見えてくる。たとえば、「危機感を持って仕事をしよう」、「これまでのやり方を変えていこう」という自分の言葉が素直に社員に伝わっていると実感していないだろうか。トップの思いを共有し、皆の意識を一つにするという点ではチャンスである。また、こういう時期でも、価値を理解し、取引を続けてくれる、購入してくれるお客様の思いや行動を見れば、事業の本質である顧客の要求や自社の本当の良さ・強さがより明確に見えてこないだろうか。本質を見つめなおすという点でもチャンスである。過去を振り返れば、円高やオイルショックの時に、ピンチをチャンスに変えてきた、私たちの能力に気づくこともできるかもしれない。

 今こそ、経営者は、社員が何に意識すべきか、フォーカスすべきかを語るべきではないだろうか。ポイントは未来である。理想の姿を描き、どのような会社になっていきたいのかにフォーカスし、その実現のために何をしなければならないかを考えることを促すのである。未来を考えることで、人は意識や行動を変えることができる。

 経営者は、語ることを意識しすぎて、問いかけを忘れていないだろうか。問いかけることで社員の意識をフォーカスし、変化を見逃さず、新たなチャンスを導き出すことこそ大事なのではないだろうか。今は苦しいときであっても、将来のためなら努力し、耐えることができる。しかし、将来を信じることができないと、苦しみから逃げ出してしまうのではないだろうか。今はまさに理想の会社を作り、それを通して理想の社会を実現するチャンスである。私はそこにフォーカスしている。

(この原稿は生産性新聞2009年3月5日号に掲載)
 

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