ドラッグラグ

患者の声を医療政策に反映させるあり方協議会第15回勉強会に出席

今回は「ドラッグラグの現状と、その対応策について」
と題し、4人のスピーカーによるスピーチとパネルディスカッション。

一人目は、「肺高血圧症患者の願い」と題して
PAHの会の村上紀子さんのスピーチ。
1996年に長女が肺高血圧症になり、医師から余命6か月と
言われるものの、自ら調査し、米国では治療薬が
あることを知り、治療。長女は現在も存命。
世界で使われてい主な治療薬13のうち日本で承認されてるいるのは6。
今回、欧米アジアで承認されているイロプロストの開発要望書を
提出するも、早期承認は認められず、5年程度時間がかかりそうとのこと。
問題は、肝炎などの薬害は新薬の検査をきちんと行わなかった
からという患者団体からの指摘で、厚生労働省やPMDAが
海外のデータ使用に慎重になっていること。しかし、HIVのように6ヶ月で
承認される新薬もある。

二人目は、「患者の立場から見たドラッグラグ~なぜ?いつまでたっても
解消できないのか」という題でがんと共に生きる会の海辺陽子さんのスピーチ。
2007年に有効で安全な医薬品を迅速に提供できるための検討会やがん対策推進基本
計画において、致死性の疾患については500日程度で患者に使用できる
環境を整えるという方針が出た。しかし、ガンの主な薬で世界で上市されたものと
日本で上市されたものの差は、短いもので2年11ヶ月長いものは9年10ヶ月、
1999年に世界で上市されたもので、いまだに未承認のものもある。
問題は、リスクとベネフィットのバランスを取っていないこと。死にいたる病気の場合の
副作用とそこにまで時間のかかる病気での副作用を同じものとして考えること
に問題がある。FDAではそこへの対策がある。
ドラックラグの日本での課題として、治験開始時期の遅さ、治験期間の長さ、承認申請から
薬価収載までの期間の長さ、企業が開発したがらない稀少疾患への対策がない、承認後の
安全管理のあいまいさをあげている。

3人目はPMDA(医薬品医療機器総合機構)の近藤理事長が「PMDAのドラッグ解消への取り組み」
と題して、スピーチ。
近藤理事長が来て、理念を制定し、皆が同じ方向を向くようにされた。日本での申請の遅れや
治験業務の遅滞、承認審査の遅滞という問題に対して審査・相談業務体制の強化、国際共同治験
の推進、レギュラトリー・サイエンスの推進、治験センターの機能強化という4本柱で対策を
打っている。
承認審査体制拡充では、平成19年度からの5年間で開発期間(開発から申請までの期間)を
1.5年短縮、承認審査期間(申請から承認までの期間)を1年間短縮する目標を立てた。
現状は平成22年度で優先品目の新医薬品は9.2ヶ月、通常品目は14.7ヶ月で目標を
上回っている。
またレギュラトリーサイエンスの概念を導入し、規制に評価基準を科学的に導入しようとしている。
つまり、科学技術の進歩のメリットとデメリットを予測・評価する方法を研究し、調和させようとしている。

最後に慶応義塾大学薬学部でレギュラトリーサイエンス講座を担当する黒川教授に
「ドラックラグ その構造と克服に向けた視点」と題してスピーチ。
まずドラッグラグを「海外で標準的に用いられている医薬品(薬物療法)が使えない、
または使うに困難な状況」として定義。承認の問題と保険償還対象の問題の両面があることを
指摘。
いくつかの薬で人種差よりも個人差のおうがばらつきが大きいことを指摘した。
(これは欧米で承認されたものをそのまま受け入れることに問題があるのではなく、
 それを受け入れた後も、承認されたから安全だと考えるのではなく、個人によっては
 副作用が強いことを認識した治療に焦点をあてるべきとの指摘と私は捉えた)
したがって薬物療法は、患者と医師・薬剤師・看護師の間の協同作業としてとらえるべき。
審査としては、アジアでは、欧米で承認された新薬は外国データの審査承認や簡単な手続き
での製造販売の認可を出しているところもあり、どこまでの簡素化を考えるのか、
国の責任を考えるのかと判断していく必要がある。今日本では米・英・独・仏・加・豪の
欧米6カ国のうずれかで承認されたもので、必要性の高いものを製薬企業に開発を
促す活動を行っている。
また、経済的な問題を克服するために、適応拡大を柔軟に行い、市場のパイを広げることの
検討の余地もあると指摘。しかし、副作用の発現について日本人と欧米人では3割違いが
見られるとの報告がある以上、国内においての検証が基本であることに変わりはないと指摘。

パネルディスカッションでは、行政側・運営側としてはドラッグラグの問題は手を打っており
解消に向かいつつあるとの認識があり、患者団体との認識との大きな差があることを指摘。
また、患者団体にも、早期承認を求める団体と徹底的な安全の担保を求める団体とが存在する。
生死に関わる問題について、それぞれの主張を理解したうえで、合意をとっていくことが
必要であり、問題を起こすと国をたたくことを優先するマスコミやそれに載せられ批判する
我々が変わらない限り、この問題は解けそうにないと感じた。

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