経営品質と医療の質

今年度の日本経営品質賞では、川越胃腸病院が病院として初めて受賞しました。

望月先生をはじめとする病院関係者にお祝いを申し上げたいと思います。
(私も患者なので関係者の一人ではありますが)
この病院の素晴らしいところは、医療安全や医療の質が高い中で、職員満足、
患者満足が高く、成果が出ているところです。

こういう評価が経営品質でできるようになるまでには時間がかかりました。
というのも、日本経営品質賞の審査で、医療の質や安全に関してまで評価
して日本のモデル組織であるといえるようにするまでには、私たち評価する側が学習を
重ねる必要があったからです。

結果的にJHQCという認証制度を立ち上げ、医療関係者も参加して評価することに
よって、医療安全や質の評価の担保をしたうえで一定のレベルにある病院が日本経営品質賞に
応募できるという仕組みを作り、ようやく応募の道筋ができました。

さ て、昨日は、そのJHQCのシンポジウムがありました。TPSを病院改善に取り入れている
コンサルタントDr.Margaret Falboさん、経営品質で成果を出している福井県済生会の
田中延善病院長、聖路加国際病院の福井次矢院長の話がありました。

私はあいにく参加できなかったのですが、妻の万理から話を聞き、資料をもらい概要が
確認できました。

今更、TPSを病院で学ぶというのは意味があるかどうかははなはだ疑問に思っておりました。
日本でも看護部門を中心にTQCを取り入れ、小集団活動を行っている病院が相当数あると
思っているからでした。
もし、学ぶ点があるとしたら、小集団が部門で閉じずに部門横断である部分や病院施設の
設計の段階から現場の改善提言を受け入れているとか、最終的なアウトカム(医療の
質のアウトカムだけではなく、患者満足、職員満足、財務成果などを含む)の改善にまで
つなげているといった点でしょうか。

このあたりは手法を学ぶのではなく、どのようにそうした取組ができるように組織を変えていく
かを考えることが大事であり、そのためにはJHQCの活動が一層重みをもっていると
思われます。そうした意味で福井県済生会病院の田中先生の話は、本当に良い事例です。
また、もう6年前になりますが、私の共著「シックスシグマでバランススコアカードを
成功させる」で私が主張した、全体の経営に経営品質の考え方と基準を活用し、
その実践のツールとしてシックスシグマとBSCを活用することを、見事に体現した組織でもあります。

また福井先生の活動を通じてQIの活動が普及していくことは、JHQCの望んでいることでも
あります。そもそもはクオリティは何を大事にするかを明確にし、定義し、測定し、改善して
いくものです。それを実現するには、病院の中で、どのような指標を大事にするのか、
そして目標を設定し、改善していく組織力が求められます。私が、東大医療政策人材養成講座(HSP)
で研究した結論も、経営の質を高めて組織能力を高めることが医療の質の向上につながるという
ものでした。

JHQCではこのような活動と連携をしていく方向で動いています。その第一弾として、
JHQCでは、組織プロフィールの中に安全認識という項目を取り上げ、JCIで重視している安全目標に
ついてどのような認識で経営を行っているのかを確認する横目をもけました。
また、AHRQで設定している安全指標のデータを提供することを要求しました。
今後は、医療の質に関するデータもさまざまな知見をいただき、要求していくことになるかと
思います。

そういう面で、医療の質を高めるお気持ちの医療関係者の方にもっとJHQCの活動をしっていただき、
参加していただき、迅速に制度を充実できればと思います。

なお、資料を見ているとTPSの紹介で、Eliminate central line infections in 90 days
の改善のご紹介がありました。一方で、福井先生の資料の中で、中心静脈カテーテル挿入における
合併症発生率のデータのご紹介がありました。素人ながら近い領域の話をしているように思え、
そこでの改善の仕方の違いなどにパネルディスカッションで触れられたら面白かったな、と
思いました。

いずれにせよ、多くの方が参加し、お話を聞かれたことが、医療の質の向上につながることを
期待しています。












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