限界を創る心に気づく

「『私たちは実現できる』という強い意識が革新を生む」

サッカー日本代表が南アフリカで開かれるワールドカップ出場を決めた。実力的には当然視されていたが、試合内容に問題があり、ワールドカップでベスト4という目標はおこがましいという、批判が強い。この状況をどう捉えていくのか、非常に興味深い。というのは、選手や監督、スタッフが日本人ではサッカーで世界のベスト4になれるはずがないと思っていては、べスト4になれるわけはないと思うからである。
 なれると思い、なるためには何をするのかから、世界トップレベルになるための戦いが始まっている。日本人は、体力的に1対1で勝てない。従ってチーム(集団)で守り、チーム(集団)で攻めるサッカーを志向している。また、オシム監督以来、日本人の俊敏性を最大限に活用するようなサッカーにより世界で通用するようになろうとしている。昨年、ヨーロッパ選手権で体格的にあまり差のない、スペインが優勝したこともあり、日本人でもトップレベルになることができるという言が多くなってきている。
 しかし、一方で長年サッカーは、世界で後塵を拝してきた。ヨーロッパやブラジル・アルゼンチンといった南米のチームに強いあこがれがあり、そのリーグやチームを神聖化してきた面がある。もし、サッカーに関わる人が本音では日本は世界のトップレベルにいけるわけがない、いっていいものなのか、といった意識が隠れているとそれは選手やスタッフの指向に影響を与える。日韓ワールドカップでは、日本はベスト16、韓国はベスト4。両国の差は、どこまで目指していたかに依存している可能性もある。野球は世界一となった。そこには、日米学生野球などの交流で、アメリカに勝てないことはないといった意識を醸成していることが、その基盤にあるように思える。
 企業活動でもそういうことがありうる。素晴らしい企業を紹介しても、「あそこは恵まれている」「環境が恵まれている」「自分たちとは違う」といって、学ぼうとしない組織がある。その背景には、うちには無理だ、という意識がある。人は素晴らしい才能を授かって生まれてくる。しかし、年を重ね、社会でもまれているうちに自分で出来ない理由を創り上げている。
また、かつてほど日本という国に勢いがない。勢いがあったときは、出来て当然というメンタリティがあった。今は自分には無理だと最初からあきらめてしまっている面もあるような気がする。
 経営品質のセルフアセスメントは、そうした思考を持っている自分に気づくことを大事にしている。ビジョンや理想の姿を描くことは、夢を語ることではない。ビジョンや理想の姿を描く際に、「私たちは実現できる」という強い意識を持っていることが必要である。
(このlコラムは生産性新聞5月25日号に掲載されたものです)

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