HSP

東大で開かれている医療政策人材養成講座(HSP)を終了することができました。
この講座は、医療従事者、患者支援者、政策立案者、ジャーナリストの4つのステークホルダーから選ばれた人が相互作用の中で、医療を動かす人材になることを目的としたものです。私はその3期生です。今週末には第4期も始まります。

私は以下の3つのプロジェクトに参加しました。
・2025年の医療ビジョンを創る
・志木市における特定健診とがん検診の融合提言
・医療の質を高める定量データの有効活用を進めるための社会インフラ整備の提言

です。最後のプロジェクトはほぼ私が単独で行ったものです。
参加者の医療を良くしたいという思いは強く、また高い知識レベルの方が多く、講義、対話、夜の対話、プロジェクトでの対話などいつも勉強になることばかりでした。

私のプロジェクトの主張は以下のとおりです。

医療の質を高める定量データの有効活用を進めるための社会インフラ整備の提言

「市民にとって、医療の質とは、どの病院でも同じ治療が受けられることをさす。その質を判断するためには、治療の質や量に関する情報を重視したいが、その情報の量と質が十分でないため、今は医師の専門性に関する情報が適切に提供されることを期待している。今後、臨床指標情報の収集は、病院選択の貴重な情報になり、病院同士が切磋琢磨する要因となるが、一方で、情報の受け止め方が今のように混乱している状態では、患者やマスコミの誤解が助長し、病院自体が難しい治療を引き受けない状態や、成果を捏造するような病院が出かねないと懸念している。一定の正しい情報を提供し続ける病院に診療報酬などで支援し、臨床指標収集を定着させ、比較改善を通じて病院格差をなくし、日本全体として質の改善運動や財政支出を判断する情報として期待され、あらゆる病院で情報が公開されることを望んでいる。

 日米の病院研究を通じて、日本の中においても、情報を十分収集している病院があることがわかった。先進的な病院は米国の優れた病院と同じような取り組みをしていることもわかってきた。従って、情報収集活動が出来ない理由を今の日本の医療環境に求めることはできない。病院全体で医療の質に関わる情報収集を行う際にネックとなるのは、病院幹部の経営能力であることが鮮明にわかってきた。

 優れた病院の経営者は、理想に一歩近づこうと努力していることがわかった。こうした病院を通じて医療の質を高めることへの阻害要因は、経営の努力に欠ける病院である。全ての病院がすぐれた経営ができるようになることを前提に医療制度や施策を考えれば、現在の延長線上ではない、将来を描くことができるのではないか。

 全ての病院で優れた経営をすることの重要性に気づけば、病院の成熟度が一歩あがる。そうすれば、市民や患者、政策立案者、マスコミの病院に対する意識やニーズは必ず変化する。成熟度が一歩向上し、一歩進んでいる病院が努力を享受できる環境が整うのである。

 医療の質を高めるために臨床指標を有効に活用するためには、情報収集に対する資金的サポートを行うといった直接的な手段よりも、自らの努力で指標を定義し、向上していくような組織作りに資金的なサポートを行うほうが、長期的に見て効果が高いのではなかろうか。各病院の経営を高めていくということは、医療という社会インフラを整備するという点で非常に重要なことである。病院の経営の質の向上こそ、医療の質の向上につながるはずである。」

最後に今後の発展のためにHSPに対する提言を一つ

4つのステークホルダーが対話をする時に、大事なことは対話を通じて自分の考えのくせに気づくことです。ピーターセンゲ教授が良くいう「メンタルモデル」です。複雑な課題の場合、各ステークホルダーが自分の主張こそ正しいという視点で話をしていては、進歩がありません。自らの考え方そのものに誤りがあることを他の視点を持つ人との対話の中で気づき、気づかせることが、課題の根本の要因に気づくポイントになるそうです。こうした対話を行うには時間が必要です。もっと対話の時間を取れるようにしていくともっと良い講座になり、目的を果たすことができると思います。

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