映画「シッコ」を見て

マイケル・ムーア監督の映画「Sicko」を見てきました。HSP(東大医療政策人材養成講座)3期の岩本さんから勧められたのですが、いろいろと考えさせられる映画でした。

この映画で始めたわかったことは、一つには国民皆保険制度(映画ではUniversal Insuranceといっていました)のベースには社会主義的な思想があるというアメリカ国民の根強い認識でした。国が保険制度を導入するということは、価格を政府が決めることになり、需給と供給のバランスで決定されるという経済学からの逸脱を意味するということなのでしょうか、自由競争がなくなることはまさに社会主義であり、そうしたことを許すと民主主義が守れないという意識が刷り込まれていることがよくわかりました。つまりそこで思考停止になり、医療制度のあるべき姿が検討できない国民がいるということです。

また、欲望にはきりがないということもよくわかりました。資本主義のシステムの中で、倫理観を失い、欲望に制限を設けないまま肯定していくと、医療という領域でさえ、金を儲けることを目的とするシステムが出来上がってしまう怖さを感じました。上場企業においては、株主からもっと利益を出すことを組織は求められます。そして利益をもっと出す経営者には破格の報酬が準備されます。医療に関わる保険会社、製薬会社が今回の映画のターゲットとなっているように思われますが、彼らも資本主義のシステムとして徹底的に利益をあげるシステム化し、政治まで取り込んで最適な集金マシーンになっています。

そこで働いている人の良心はどうなのかと感じるのですが、成功を夢見、成功した人を賞賛する文化や、家族に良い暮らしをさせたい、良い暮らしを維持したいという思いが、いやなことでも我慢してやっているのかな、などとも感じてしまいます。

気になるのは、日本は他人事ではない、と他人事のようなコメントをしていまう人が多いことです。マイケル・ムーアは自国の医療制度が「Sicko」になってしまったのは、政治と保険会社・製薬会社の癒着によるものであると糾弾しています。翻って日本ではどうなのか。この映画を見て、日本の医療制度を調べてみることをどれだけの人がしたのかが気になります。日本の医療制度は悪くないけれども、医療従事者からはこれ以上もたないという悲鳴があがっています。その事実を知っている人、知っている中で自分なりに意識や行動を変えた人が少ないことが、他人事でコメントしているような人が恐れる、医療制度の崩壊につながると危惧してしまいました。 まあ、ついこの間まで私もその一人でしたので、批判だけで終わらないように行動したいものです。

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