組織を見る三つのレンズ

組織は三つの視点で見ることができるそうです。前述のmaanen先生からご教授いただいたものです。

一つは戦略デザインとしての組織、もう一つは政治的システムとしての組織、最後に組織文化という視点です。戦略デザインとしての組織とは、組織を戦略的目標達成のために作られたシステムとしてみるということです。環境変化に適応して戦略を明確にし、組織をいかに戦略と一貫性のあるものにフィットさせるかに主要な関心がもたれるものです。多くの人は会社組織をこの視点で見ています。

政治的システムとは、誰の利益になるのか、とどういった力を行使できるのか、という二つの視点で組織を見るものです。誰とは、株主、顧客、従業員、組合、パートナーといったステークホルダーや、経理・人事といった機能集団、派閥・学閥といった人的関係などが挙げられます。かつての日産は、組合とグループ企業の利益を最大化する組織でした。カルロスゴーンは、それを株主の利益を最大化すべく改革を行いました。例えば、病院は医師を頂点とする政治的システムと見ることができるのではないかと思います。

組織文化の考え方の基盤にあるのは、トップの権威や影響力には限界があり、組織構造や合理的な判断だけでは人間の行動を説明することができないという考え方です。人は個人としてまた集団としてどのようなアイデンティティを持ち、どのような認識やメンタルモデルを持ち、モラルや行動標準を大事にしているのかという点に焦点をあて、組織には過去から蓄積された組織独自のものの見方、行動がある社会集団、ネットワーク組織であることに着目しています。意識改革といったことはこの組織文化の変革を意味しているといえます。

これまで病院では政治的システムとしての集団の説明がぴったりであったといえます。中には組織文化に関する視点で非常に成果をあげている病院もありますが、普通の企業ではもっとも大事にしている戦略デザインの視点が最も欠けていたといえるのではないかと思います。

患者中心の医療を行うということは、この三つの視点でどう変えていくのかということを考える必要があります。戦略デザインの視点では、患者中心の医療を組織目標としてかかげ、各部門が一貫して共通の目標を達成するように組織がデザインされ、仕組みが変更されなければなりません。また政治的システムとしては、患者中心の医療を大事にする人材を医師のトップにすえていくか、病院の中で医師を専門家集団として遇し、病院経営の主体としないなど政治的な力の使い方や分散の仕方が必要になるでしょう。さらに組織文化としては、治療の質だけを患者が求めているのではないことや、個人の犠牲ではなくチーム力や組織力のレベルアップによって治療の質を高めることが求められていることにスタッフが気づいていくプロセスを導入することが必要になるのではないかと思います。

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