市民参加による社会インフラ作り

厚生労働省の発表では、地方のほうが都市部よりも糖尿病の比率が高いそうです。糖尿病の比率が多い理由には、肥満である率が高いことと、住民あたりの医師の数が多く発見されやすいためと国立医療センターの野田光彦部長は話しています。糖尿病は食べ過ぎや運動不足といった生活習慣が原因とも言われますが、ちょっとしたことでも車を使っている地方と、徒歩や公共交通機関を活用することの多い都市部で、差が出ることは、なんらかの因果関係があるように思えてなりません。
肥満ということでは英国のシンクタンクから食べすぎや運動不足だけで肥満が発生しているのではない、という研究が発表されています。体や生物的な体質と環境があっていないことに問題があるのだそうです。かつて人は生きていくためには、体に栄養を蓄えることが重要であったのですが、現在では技術の発達により、エネルギー密度が向上し、簡単に食べ物が手に入るようになったことで必要以上のエネルギーをとってしまい、また労働の負担を減らす機械や輸送機関の発達、座ったままの仕事が増えることでエネルギーを使わなくてすむようになっていることからエネルギーが蓄積され、肥満になっていくのだということです。
現代に生きるものにとって肥満になり、糖尿病になってしまうことは必然であり、大きな変革なしに変えていくことはできない、と結論付けています。一人ひとりの意識を高め、食事に注意し、運動を促すようにできることから初めて肥満にならないようにすることも大事ですが、意識付けで克服するには限界があります。肥満になる人は意識が低い人と切り捨てるのは簡単ですが、それでは貧乏人は努力していない、といっているのと同じように聞こえます。
一方で、精神的にうつになるのは、健康に大きな影響を与えるといった話がランセット誌に出ています。また、精神的な病は組織の生産性を低下させ、コスト負担も大きいといわれています。うつに対して良い影響を与えるには、家族や友人とリラックスして過ごす時間を増やすことが幸福を感じる上でもっとも重要であり、長時間労働と長時間通勤などでストレスがたまり不幸を感じるとうつにつながるという研究が多く出ているようです。
幸せを感じる人がうつになる比率が少ないという仮説と、食べ過ぎず運動している人が糖尿病の比率が少ないという仮説はなんとなく似ているように感じます。大事なことはうつの問題も一人ひとりの意識の問題ではないと思われることです。家族や友人とリラックスしてコミュニケーションを取れないような社会になっていることに着目すべきでしょう。
根本的には、日本のように世界から見ると賃金が相対的に高い中で、日本の競争力を高めようとすると必死に働かざるを得ない状況になっています。株主価値の向上、経済合理性の追求といったことが当然視されるようになる中、こうしたストレスは更に高まっていると思われます。ストレスを感じることで食べ過ぎたり、忙しいために運動がおろそかにするなど、根本の原因は同じであるが、人によって出てくる症状が異なっていると見ることはできないでしょうか。
 つまり、病気を減らそうという活動は、根本的には私たちはどういう生活をしていくことが望ましいのかを我々市民が考え、行政や企業がそれを支援していくような流れを作ることが必要なのではないかと思います。今はそれを行政や企業が考え、提言し、市民は消費者として選択しているような気がします。このままではコストが増えていくことを食い止めることはできないでしょう。

コメント

人気の投稿