意思決定と経営品質

組織のマネジメントプロセスとして重要でありながら、あまり検討の対象に
ならないのが意思決定プロセスです。

業績が悪い場合、
応急処置と平行して建て直しのための策が検討されます。

そんなときに検討対象となるのは、戦略・ビジネスモデルの再構築
プロセス革新、人材育成といった点です。

それも悪くはないのですが、
それに関わって意思決定のプロセスをどのように機能させているかを
検討し忘れないようにする必要があります。

ダイヤモンド・ハーバード・ビジネスレビュー11月号
べイン・アンド・カンパニーのパートナーである
マーシャW.ブレンコ、マイケルC.マンキンズ、ポール・ロジャース
が「意思決定を中心とする組織」の中で
2008年に世界760社(大部分が10億ドルを上回る収益を計上)の経営幹部
を対象とした調査で
意思決定の質、スピード(競合他社と比較した)、成果、労力(意思決定に
要した時間、手数、コスト)と財務業績との関係を調べ、
95%の信頼区間で相関していると説明しています。

しかしながら、意思決定はリーダーシップといった個人の問題
だけに問題を押し付け、人材育成を課題としてしまうことが多くありませんか?

重要なことは、
会社にとって、どのような重要な意思決定があり、それはどの場面で誰が
意思決定すべきものであるのかをマネジメントシステムの問題に
意識を持っていくことです。

日本経営品質賞の審査基準では、
経営幹部のリーダーシップの中で、意思決定のプロセスはどのようなものかを
振り返ることになっています。

しかしながら、ここでは組織の人の自主性を高めるために
納得性のある、フェアな意思決定を求めていることの表面的な意味でしか
受け止めていることが懸念されます。

会社全体で意思決定すべきもの、現場の責任者が意思決定すべきものを
明確に示し、その責任や権限を同一させ、素早く的確に意思決定できるような
意思決定体制になっているのかを振り返る必要があります。

戦略会議で意思決定しているといってその体制を明記し、プロセスが
明確であるから良しとする評価でよいのでしょうか?

そうではなく、いかに素早く意思決定できるような環境や体制を整えている
か、何を工夫しているのかに焦点を当て、振り返る必要があります。

中小零細企業の場合は、基本的に社長が意思決定し、それを
幹部が受け止め実践していくという形が出来ていることが多く、あまりそこに
メスを入れる必要がないかもしれません。
しかし、規模が大きくなったり、大企業の子会社の場合は、
意思決定のプロセスが複雑になっており、
そこに着目することが出来ずに終わることもあるのではないでしょうか?

特に大きな意思決定はいいのですが、細かな日常の意思決定が結果
的に戦略を創りこんでいくという場合には、
細かな意思決定プロセスをどうつくり、そのノウハウを共有しているのかが
決定的な場合があります。

意思決定の妥当性には、決定を受け止めてもらう、という要件以外に
当然ながら意思決定そのものの質といつまでに意思決定をしなければ
ならないのかというスピードという要件で判断する必要があります。

これらは、組織のプロセスの問題でもあり、意思決定者のスキルや能力でも
あるのです。能力のない場合は交代です、スキルがない場合は教育と実践で
学んでいくことができます。しかしプロセスの改善にまで着手できている
組織の数は限られていないでしょうか?

こう視点からアセスメントをしないと
課題が明確にならない場合もあるのではないでしょうか

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